金賞+特別審査員賞×3
(賞金100万円+副賞20万円×3)

タイトル:『歌舞伎役者と承認欲求』
ペンネーム:羽山まなぶ

【編集部寸評】

「独占欲」や「承認欲求」など、現代人が普遍的に共感できる「人間のいやらしさ」と
「江戸時代の風俗」とを結び付けて強い世界観を生み出しつつ、
「通信板(スマホ)」や「よき(いいね)」の
ような、心をくすぐるパワーワードを
生み出すセンスも卓越していました。
羽山さんはとにかく「自分の好き」と
「人生で感じた負の感情」この2点に真正面から
向き合っている作家さんだと感じました。
そこを突き詰めたからこそ、
「この作品はこの人にしか描けないだろう」
という説得力が生まれていますし、きっと描かずにはいられなかったのだろうという
あふれ出す熱量を感じます。
これからも自分の感性に臆せず向き合っていってください。
読者を驚かせる羽山ワールドを期待しています。



特別審査員【をのひなお先生 寸評】
(『明日、私は誰かのカノジョ』作者)

実際に経験していなくても気持ちが分かると思わせる心理描写や、
艶っぽい魅力のある絵柄、江戸と現代が融合した引き込まれるストーリーで一気に読んでしまいました。
今を生きると覚悟を決めたはずの主人公の最後の葛藤がなんとも人間らしく、
綺麗に終わるだけではない、余韻を残すラストになっていてとても良かったです。
是非他の作品も読んでみたいと思いました。



特別審査員【吉田雄太先生 寸評】
(『Forward!-フォワード!-』作者)

通信板やよきなど現代の世界観をIFの時代劇に持っていく剛腕さと、
節々で見せる演出力が際立っていました。
抱えている問題が現代人とリンクしている為、特に違和感なく読め、
安易なハッピーエンドにしなかった分リアリティが増したと思います。
役者としての実力が足りていない描写や客の反応を入れると、もっと落差を出せたかなと思いました。
独自の感覚とセンスを持った作家さんで、
この方のもうひとつの読切はポジティブな内容を描き、
且つ審査員を狙って分けたジャンルだったので頭も良い人なのでしょう。
このままどんどん突き抜けていったら
濃いファンに恵まれると思いました。





特別審査員【宮口ジュン先生 寸評】
(『あなたは私におとされたい』原作担当)

独特の世界観が作り込まれていて、お話に惹き込まれました。
「よきが欲しい」というワードセンスが秀逸ですね。
主人公の人間臭さ・葛藤など感情描写がしっかり出来ており、
作品の完成度が非常に高いと思いました。大変面白かったです。
今回は世界観に合わせての絵柄なのか、普段は全く違う絵柄なのかは分かりませんでしたが、
羽山さんが描く別の世界観の作品も是非読んでみたいと思いました!
羽山さんの今後のご活躍も楽しみにしております!


金賞
(賞金100万円)
タイトル:『オシ⇄コイ』
ペンネーム:橙山しゃげ
【編集部寸評】

サブキャラも含めて全体的にキャラクターの好感度が高く、
爽やかで熱い少年少女の青春ドラマが心を打ちました。
どのコマもキャラクターが魅力的に見えるよう
表情や仕草が描き分けられており、
非常に見応えがありました。
脚本の完成度が高く、ストーリーの構成は整理されている一方で、
画面の構成はもう一工夫できそうだと思いました。
変則的なコマ割りは目を引きますが、
多用すると読みにくくなるので、
ここぞ!という時に絞って使ってみてください。
今以上に読者に伝わりやすい表現を磨くことで、
多くの読者を釘付けにできるはずです。
今後に期待しています。

銀賞
(賞金30万円)
タイトル:『ヨソモノと暮らす犬』
ペンネーム:ブブ

【編集部寸評】

ブブさんの魅力は、なんといっても絶妙に
ゆるいキャラデザの動物たちです。
犬を日常的に観察している方だからこそ描ける表情だなと思う絵がいくつもあり、
細かいところまで楽しませていただきました。
まだ荒っぽいものの、サラッと社会風刺を入れ込んだ
ストーリーラインにもセンスを感じたので、
今後はより読者に伝わりやすい展開構成を意識していくとよいと思います

銀賞
(賞金30万円)

タイトル:『忙殺の勇者』
ペンネーム:アラビア吾朗
【編集部寸評】

テンポの良い漫才のような会話劇、ユニークな生態の魔物など、
クスっと笑えるギャグ要素が多く、楽しく読めました。
アクションシーンもわかりやすく、ハッタリの利いた構図が作れており、
積み上げられたセンスを感じます。
一方で、キャラクターとストーリーの構築には一考の余地があると思いました。
強い葛藤を引き出せるようなドラマを作ると、
キャラクターに楽しさ以外の「人としての魅力」を付与できます。
連載では、そうした部分も意識しつつ、コメディの強みを発揮できると、
きっと長く愛される作品になると思います。

特別審査員賞
(副賞20万円)

タイトル:『青の時間を残して』
ペンネーム:takaho


【編集部寸評】

誰しもが胸に抱える、肯定も否定もされたくない「思い出」温かく描いた作品でした。
またエモーショナルな雰囲気を後押しするかのような、キャラクターの目線運びも印象的です。
ただ、直接的な言葉でキャラクターの心情を説明してしまっていたので、

そこはキャラクター同士のやり取りで心情の表現にチャレンジしてみてほしいです。
読者が抱く期待を超えてくる見せ場を意識的に作っていけると、

より深みのある作品になるのではないかなと思います。



特別審査員【梅涼先生 寸評】
(『あなたは私におとされたい』作画担当)

「同窓会での再会」「青春の回顧」という、
多くの人から共感を得られそうな題材がとても良いなと思いました。
篠くんが初恋をあくまでも思い出として昇華しているのも良かったです。
キャラの表情も豊かで絵柄も可愛らしく、
特に33ページ目の春宮さんの表情にはドキッとしました。
全体的に文章で説明しすぎている印象を受けた
ので、
「絵で魅せる・伝える」「間を取る」「静の雰囲気を大事にする」
ということを意識して頂けると、より読みやすい作品に仕上がりそうだなと感じます。
文の詩的な表現が素敵な作品でもあるので、
そこのバランスを上手く調節できると、
takaho先生の世界観により深みが増すと思います。

銅賞+特別審査員賞
(賞金10万円+副賞20万円)

タイトル:『もしもゲーム ~蛇とリンゴの戯れ~』
ペンネーム:コウ

【編集部寸評】

応募作は学園賭博漫画で、セリフが多くなりがちなジャンルであるにも関わらず、
読み進めさせるだけの高い構成力を見せてくれました。
また、キャラの表情描写もとても魅力的で、読者を楽しませようとする意志が
しっかりと伝わってきて引き込まれる作品でした。
主人公を立たせるために、ヒロインの視点から描く手法も非常によかったので、
今後は〝読者の感情を動かすキャラクターとはどんなものか〟という点を
より詰めて考えると、多くの読者を惹きつける作品になるかと思います。


特別審査員【丸山恭右先生 寸評】
(『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』作画担当)

応募作の中で一番「次の展開が気になる!」と思わせてくれたのがこの作品でした。
ちょっとした博打漫画の体ですが、物語の設定や賭けのゲーム内容なんかはどうでもよく、
あくまでキャラクターの行動や言動だけで読めてしまうというところに求心力がありました。
コマ割りも読みやすく、キャラクターの表情が生き生きとしているところから、
作家さんの描き手としての魅力が伝わってきます。
また、冒頭からオリジナリティあふれる展開で、飽きさせない工夫が端々に散りばめられていました。
特に、「何の特技もないけど、かけ事になると謎の才能を発揮する主人公」と、
「たった6年で富豪に成り上がる、謎に運を引き寄せる力を持つヒロイン」の対決という
設定はなかなか見たことがないですし、最高に面白い組み合わせだと感じました。
主人公は、最終的にヒロインから2億円を勝ち取りますが、まだ借金200億円あるんですね。
これからの二人のバトルが楽しみです。ぜひ続きを描いてください。笑


銅賞
(賞金10万円)
タイトル:『忌望の魔法少女』
ペンネーム:洛太郎


【編集部寸評】

バトルシーンの迫力やキャラクターの表情の強さなど、
自分の強みを全面に押し出した作品であることが選出理由の一つです。
その他にも、作中で使用される〝忌厨(キッズ)化〟やタイトルにもなっている〝忌望(きぼう)〟
いった用語にも光るものを感じました。
先述した通り、バトルのアクションや表情はしっかりと描けているので、
あとは設定に埋もれないだけのキャラクターを作り上げてほしいです。
「作品を通して、どんな読者にどんな感情を抱いてほしいのか」を突き詰めて描くことで、
より魅力的なキャラクターが生まれてくるはずなので、今後の作品作りに活かしてほしいと思います。